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かんとこうブログ

2025.02.26

樹脂でできたスケートリンク

テレビで氷ではなく樹脂でできたスケートリンクが紹介されていました。樹脂の摺動(しゅうどう)性を利用しており、パネルを敷き詰めるだけでリンクができあがり、氷を維持するために電力も当然不要なため環境にもやさしいと紹介されていました。どんなものからできているのか化学屋としては気になるので調べてみました。

Glice® Japanと言う会社が日本では代理店となっていることがわかりました。このGlice®というのが、樹脂でできたスケートリンクを構成するパネル始め一連の商品の名称のようです。この会社のサイト(下記URL)では下の写真と説明が載っていました。このリンクは、特殊な樹脂でできたパネルを何枚も張り合わせて大きなリンクにしたもの(下右図)で、小さなパネルであれば家庭の中でも練習に使用できる(下左図)としています。

https://glice.jp/

    

とにかく氷を使用していないため冷却が不要であり、季節を問わず使用できることに加え、どこにでも設置でき、維持も容易で省エネです。すでに日本でも様々な場所で導入されているようですが、私の興味はひたすらリンクにどんな樹脂が使用されているのかということに尽きるので、このサイトの中で参考になりそうなところを探してみました。

左図の靴のブレードについては、このリンク用に特別に開発された鉄が使用されていると書かれていますが、どういう鉄なのかはわかりませんでした。右側のリンクのメンテナンス機械に関する説明では、パネル表面のクリーニングと滑走表面の再生が可能と書かれていますので、リンクの表面に熱を加えて整形し直すのではないか、すなわち材質は熱可塑樹脂であろうと推測しました。

なんとか他に情報がないのかと探したところ、このGlice®が他社品と大きく異なる理由についてCEO氏の説明ビデオがありました。英語のビデオでしたので細かいところまではわかりませでしたが、大意は以下の内容でした。

背景に粉末状材料を用いて、熱と圧をかけて成型している映像が見えましたが、実際の製造工程の映像かどうかはわかりません。さらに樹組成に関わる情報がないか探すと製品パネルの寸法と重さがありましたので、比重(密度)を計算してみました。

大きさ/厚さは3種類ですが、それぞれ計算してみると最も小さいパネルの場合で密度は0.833g/cm3、大き目のパネルはいずれも0.974~0.976/cm3となりました。一番小さなパネルは形が直方形ではないので、他の二つの大きさから密度の値が大きく外れてしまったのではないかと思われました。しかしいずれにしてもこの密度は実に大きな手掛かりとなります。

プラスチックの摺動性(すべりやすさ)と言えばすぐにテフロンが思い浮かびますが、実は、プラスチックには摺動性が求められることが多く、多くのプラスチックで摺動グレードが用意されています。(下左表)

しかしながら、一般的にプラスチックの密度は1.0g/cm3よりも大きく、特にテフロンは重いフッ素を多量に含むため密度が2.0g/cm3を超えます。一方でこのパネルに使用されるプラスチックの密度は1.0g/cm3よりも小さく、これを満足するものはポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンしかありません。上の右表にはもともと摺動性の優れたプラスチックとその動摩擦係数が示されていますが、ここから類推するに使用されている材質は超高分子量ポリエチレン類ではないかと思われます。

もちろん、密度だけからの類推なので全く自信がありません。全く見当はずれかもしれません。しかしながら妄想老人としては、何か特別な技術が潜んでいるのであれば、それを何とか塗料に応用できないものかと考えてしまうのです。今回の材料がもし超高分子量ポリエチレンでったとすれば、おそらく簡単には溶剤に溶けてくれそうもないので塗料として使用することは難しいと思われますが、何かに応用できないものでしょうか?

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