かんとこうブログ
2025.02.28
2035年/2040年のGHG排出量とエネルギー基本計画
2月18日に2035年と2040における日本の温室効果ガス(GHG)削減目標が国連に提出されました。この内容については、すでに昨年11月、12月の有識者委員会で議論され、2035年度に60%、2040年度に73%削減する(いずれも2013年比)ということで了承されパブリックコメントを経て提出に至ったものです。しかしながら、昨年の有識者委員会でも、意見が分かれ、削減が不十分とする意見もあった中で、現実的な側面が優先された感もあります。そのあたりの事情をNHKが報じています。(下記URL)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241224/k10014677561000.html
国連に提出された削減目標を図示すると下図のようになります。環境省のサイト(下記URL)から引用しました。この図の標題がNDCとあります。これはNatonally Determined Contribution、訳すと「国が定めた貢献」であり、パリ協定に加わると、これを定期的に提出する義務があります。
https://www.env.go.jp/content/000291668.pdf
この図では、全体に2050年の目標である排出・吸収ネットゼロにむけて一直線に赤線が引かれており、最終目標に向けて整合性があるように見えますが、足元の2021年、2022年ではその赤い直線をわずかに上回っており、2014年以降は、排出・吸収量として、森林による吸収量もカウントしていることを考えると、そうそう簡単に達成できるわけでもなそうな気がします。
これを温室効果ガスの種類別に詳しくブレークダウンしたものが下表になります。
これをわかりやすいようにグラフにしてみました。エネルギー起源のCO2の部門別削減目標値を示します。
エネルギー起源のCO2は、2013年で温室効果ガス排出量の9割近くを占めていましたが、2030年度までに45%を削減し、2040年度までに70~71%程度削減する予定になっています。部門別では、産業部門、運輸部門が最も遅いペースでの削減となっています。
また温室効果ガスの種類別では、削減はエネルギー起源のCO2の削減が主体であり、その他の温室効果ガスの削減はペースが遅くなる予定となっています。
上で述べた環境省の資料には、各業界団体が発表している自主的な削減目標が一覧表になっていました。興味深い資料でしたので引用しました。ここでグラフ化した業界の2013年の合計排出量は5億5791万トンで、日本全体の40%にしかすぎませんが、主要な産業は網羅されています。またこれら業界の2030年における排出量合計は3億8593万トンで2013年から2030年までの平均削減率は30.8%、排出量は2013年の69.2%になります。
このグラフから、2030年度におけるCO2削減の相場は2013年比で30%程度になります。一方で冒頭にご紹介した温室効果ガス全体での2030年度の削減目標およびエネルギー起源のCO2削減目標はそれぞれ46%と45%ですので、業界の自主削減目標では削減量が十分ではないと思われます。なお塗料は、ここでは左から2番目の日本化学工業会の中に含まれることになりますが、塗料関連団体としては具体的な数字は出されていないのではないかと思います。
さて、こうした温室効果ガスの排出動向で、最も大きな影響を及ぼす電力需要とその電源割合ですが、これについては、同じ2月18日に第7次エネルギー基本計画が発表されています。朝日新聞の資料から図を引用して示します。発電電力総量は資源エネルギー庁のデータの引用です。
2040年の電力需要は現在よりも増加すると考えられています。そうした中で発電において2040年には現在主流である火力を半減し、原子力を現在の2.5倍、再生可能エネルギーを現在の2倍程度にするというのが将来の目標となっています。中でも注目は何といっても再生可能エネルギーをどこまで増やすことができるか?ですが、これについても種類別の内訳が出されています。
再生可能エネルギーに関して、2040年の目標値と2023年実績を比較すると、太陽光は現在の2倍、風力を4~7倍、水力は微増、地熱を3~7倍、バイオマスは微増と言った感じになりますが、これは内訳比率であり、発電需要が増加していることを考慮すればさらに大幅に増加させる必要はあることは明白です。
2040年は第7次エネルギー基本計画、2030年は第6次エネルギー基本計画で示された目標数値ですが、正直言って太陽光以外は、第6次の2030年から第7次の2040年にむけてあまり進展していない数値です。これはこうした再生可能エネルギーの採用がそう簡単でないことの表れのように思えてなりません。
事実、大幅に増加することを期待されている風力発電については、最近コストアップによる計画の見直しが報道されています。現在の計画では事業として成立しないような状況も出ている中で、漠然とした不安を感じざるを得ません。
冒頭の削減数値目標は、国として国連に対して約束した貢献目標ですので、何としても達成しなければなりません。ここへきてコスト問題がネックになりそうな状況であり心配です。