かんとこうブログ
2025.05.29
社会保障の給付と負担の実際
参院選を前に、消費税減税もしくは廃止の議論が盛んにおこなわれています。消費税は福祉目的税と言われ、社会保障の目的だけに使用されるとされていましたが、法律的にはさほどきちっと規定されていないことは先日ご紹介した通りです。消費税減税となると、反対派から必ず社会保障の財源はどうすのか?との反論が出てきます。そこで、社会保障の給付と負担について、知っているようで知らない実態について調べたことをご紹介します。
まずは社会保障の給付と負担について厚労省の資料からご紹介します。(資料は下記接続先から引用)
社会保障の内訳は年金、医療、福祉その他で、それぞれ2024年予算ベースで61.7兆円、42.8兆円、33.4兆円です。福祉その他の内訳としては介護が13.9兆円、子供。子育てが10.8兆円であり、この二つで福祉その他の7割以上を占めます。
負担については、保険が80.3兆円、公費(税金、公債)が54.7兆円で、比率は約6:4となっています。つまり負担は公費よりも保険料の方が多いということです。一方消費税の2024年予算額は24.3兆円であり、公費よりも小さな数字です。仮に全額社会保障に使用されているとしても社会保障全体から見れば17.6%、約1/6に過ぎません。
ここで10年前の2014年の社会保障の給付と負担を見てみることにします。これも厚労省の資料から引用します。(さきほどとは年度が異なります)
全体的に似たような図ですが、かなり変化が見られます。まず社会保障全体の費用が115兆円と2024年の8割程度です。また給付の年金、医療、福祉その他の比率も異なっているようです。負担の方も保険金:公費(税・公債)の比率こそ変わりありませんが、それぞれの内分けは異なるようです。2014年でも消費税額は16.0兆円であり、社会保障全体に占める割合は14.9%に過ぎません。消費税があたかも社会保障全体を支える屋台骨であるかの印象は誤っています。
10年間の変化を詳細に比較するため、それぞれの項目別に2014年から2024年にかけての増加率を計算してみました。下表・下図に税収の推移とともに示します。
社会保障給付と負担のグラフ(上右図)で赤棒は給付、青棒は負担です。給付では給付全体の増え方に比べ、福祉その他が大きく伸びました。一方で年金、医療は増え方が小幅にとどまっています。一方負担においては、増え方の大きい順に法人税>消費税>税収全体>所得税の順になっており、消費税は10年間で1.5倍になっていました。先ほど見てきたようにこの10年間で消費税の負担割合が増加しています。
一方、社会保障を支える負担の内訳については、国民負担率というグラフが用意されていました。(厚労省サイトからの引用です)
この国民負率というのは何者かというと社会保障に対して、国民がどの程度負担しているかを示す指数として国際的によく使用されるものであり、定義は(税収入+社会保障費)/ 国民所得で表されます。この図からは、社会保険料負担が増加していることがわかります。一方、税金はあまり変わっていません。社会保障負担は1990年から国民負担に占める割合が1.8倍になっています。消費税の収入は増えているのに国民負担率における税金の割合が変化していないということは、他の税金、所得税や法人税の負担割合が減っているということなのでしょうか?
国民所得というのは、下図で示すように、全国民が生産・販売したものの合計から中間製品を除き、減価償却費を除き、さらに間接税を除いて、補助金を加えたものになります。GDPと比較すると2~3割減の数値になります。
