かんとこうブログ
2025.06.05
食用米の価格について・・異常な高騰と言われますが
備蓄米が随意契約で引き渡され、異例の早さで店頭にならび、長蛇の列ができすぐに完売しました。それというのも昨年来の食用米価格高騰が原因であるわけですが、以前から、この価格高騰に関してひとつの疑問を持っていました。それは、異常な価格高騰と言われるけれど、平成初期のバブル期の価格とほぼ変わらぬレベルなのではないか?ということです。昨年、コメの価格高騰問題を取り上げた時に見たグラフが忘れらませんでしたので、もう一度調べなおしてみました。
下図は農水省の米の長期的価格に関す資料です。平成2年から2024年までの米の価格が示されています。平成21年までの青線が(財)全国米穀取引・価格形成センター入札結果に基づく価格、平成18年以降の緑線が相対取引価格の平均値となっています。
このグラフを淡々と見ると、「米の価格は冷夏による米騒動が起きた平成5年を頂点として、以降ほぼ連続的に下がり続け昨年来、突如急騰して一挙に平成5年を超えるまでになった」というのが正しい見方であろうと思います。であれば、「米が高くなった」のではなく、「米が平成5年の価格に戻った」というのが正しいのではないかと思います。どちらでもよいようですが、実は大きな違いがあります。それは平成5年の前年、前々年の価格も高く、決して平成5年だけが高かったわけではないからです。つまりバブル期全般で高かったということですので、かつては結構お米は高いものだった時期があったということなのです。そこから受給バランスからでしょうか米の価格は下がり続けていました。
ただし、バブル期は今から考えても異常な時代であり、全世界の不動産を日本が買えるのではないかなどと騒がれた時代でもありました。今と比べるにはあまりに時代背景が違います。そこで、消費者物価指数と平均給与の因子を加えて上図の米の価格を補正してみようと考えました。
平成2年から令和6年までの消費者物価指数(2020年=100)は下図のようになっています。
1993年以降2020年まで物価の上がり方が極めて緩やかであったことがわかります。米価がピークだった平成5年(1993年)の消費者物価指数は95.33、令和6年(2024年)は108.48の差があります。消費者物価変動の影響を排除するため、米価をその年の消費者物価指数で割ってみたのが下図です。
消費者物価の変動が大きくなかったので、平準化した主食用米価の推移は最初の図とほぼ同じでした。次に平均給与の影響を考えてみます。国税庁の資料より引用した各年の平均給与をもとに、2020年=100として平均給与指数の推移をグラフにしました。(下図)
1990年代が高く2000年以降が減少していますが、これは非正規雇用者が増加したためと考えられます。平均給与のピーク1997年と1998年であり、いまだにそこを超えていません。
平均給与の推移も非常に緩やかなものでしたので、平均給与指数で標準化しても米価の推移には大きな影響がありませんでした。ということは、バブル期の終わりころの米の価格は、昨年と同じくらい高いものであったということになります。
検証の結果、やはりバブル期の終わりころの米の値段は昨年なみに高かったということになりました。なぜこれをしつこく書いているかというと、米の価格を買う側の論理だけで議論してよいのかということです。かつてバブル期という特殊な社会背景があったにせよ、昨年並みの価格であったわけで、生産者から見た時の適正価格を考える上で考慮すべき一要因ではないかと思うからです。