かんとこうブログ
2025.06.25
日本の原油、LPG, LNG備蓄について
アメリカがイランの地下核兵器関連施設を爆撃し、中東情勢が一層不安になっています。日本にとって中東と言えば石油と思い浮かぶほど原油の輸入における依存度が高いことが知られています。イランはホルムズ海峡を封鎖しうる地理的条件を備えており、今回のアメリカの攻撃に対する報復としてホルムズ海峡封鎖も心配されます。
一応トランプ大統領の尽力のおかげ(?)により、停戦が実現したようですが、今後の不安もないわけではありませんので、今日は日本のエネルギーの国家備蓄について調べたことをご紹介します。
まず石油ですが、よく知られているように昭和53年から国家備蓄が開始されました。日本での備蓄は、国家備蓄に加え、民間備蓄、産油国共同備蓄があり、最新の6月18日発表では、4月現在で252日分の原油が貯蔵されています。 データは資源エネルギー庁のHPより引用しています。
産油国共同備蓄というのは、日本にある民間原油タンクを産油国の国営石油会社日本政府が貸付け、万が一日本の原油供給に不安のあるときは、その在庫を日本向けに利用するという契約の備蓄です。これほど大量の在庫をもつようになった背景には、日本の原油の中東依存度が著しく高いことが挙げられ、中東依存度は2024年で93.5%に達します。そうした背景から、半年分以上の原油が国内には備蓄されています。
一方石油と比べると認知度は低いものの、LPGも国家備蓄されています。国家備蓄と民間備蓄を合わせて約100日分の備蓄が行われています。(下図:資源エネルギー庁HPより引用作表)
しかしながら、原油と比較するとLPGの中東依存度は極めて低く、2023年度では5%余りに過ぎません。今回の中東不安での影響度は少ないと思われます。(経産省資源燃料部の資料です。接続先は図中に書いておきました)
他方、LNGについては国家備蓄というのは聞いたことがありません。テレビのニュースでは備蓄量が少ないとも言われていました。調べてみると、LNGの場合には、液化に必要な温度がマイナス165℃と極低温であり、そもそもが長期に貯蔵すること自体が困難であり、貯蔵による損失が大きく貯蔵には向かないとのことでした。
ただし、LNGについても中東依存度は高くないようです。下図は少々古いのですが日本のLNG輸入先を示したものです。2023年から2024年にかけてはアメリカが増加して第3位に、ロシアが一つ順位を落として第4位になっていますが、中東はカタールとオマーンが入っている程度で中東の占める割合は少なくなっています。またオマーンはホルムズ海峡よりもアラビア海側にあるので、ホルムズ海峡封鎖の影響を受けずにすみそうです。
ただしここまで見てきたのは備蓄数量と輸入先の話です。政情不安となればまたぞろ価格高騰となるのは世の常です。それにしても世界中が21世紀がこのような時代になろうとは全く想像すらしていませんでした。