かんとこうブログ
2025.06.27
5月の貿易統計について・・トランプ関税の影響は?
6月18日に発表された貿易統計で対米輸出全体が前年比11%減、対米自動車輸出はさらに落ち込んで24%減であり、勧関税の一部を日本メーカーが負担したのではないかと報じられました。このことを数字で確認してみたいと思っていたのですが、なかなか手が付けられないうちの時間が経ってしまいました。今日はこの件についてのデータをご紹介します。
5月の速報も含め昨年の4月からの対米自動車輸出の数量(台数/月)と金額(億円/月)およびそこから計算した単価(百万円/台)のグラフを示します。
輸出金額を見ると確かに今年の4月と5月は昨年の4月と5月に比べそれぞれマイナスであるとわかりますが、台数で比較するとさほど大きな落ち込みでもないように見えます。金額の落ち込みを助長しているのは単価であり、確かにここにきて単価も落ち込んできています。ただ、この単価については為替の影響も排除できないのではないかとも思います。
ここで、自動車輸出全体と対EU向け、対アジア向けの動向を対米輸出と同じようにみてみたいと思います。
自働車輸出全体でみても、対米輸出と同じような傾向にあります。全輸出に占める対米輸出の割合は、2024年度で約1/3ありますので、対米輸出の影響がある程度考えられます。ただし、対EUと対アジアの自動車輸出も似たような状況にあることはあまり報道されていなかったようです。
淡々とみると対EU輸出も対アジア輸出も対米輸出と同じような傾向を示しているように思われます。すなわち、この4月5月の輸出は、台数も減少、単価も下降、したがって金額は大きく下降という点は対米だけでなく、他の地域への輸出も共通しています。
もちろん、25%もの関税の影響がなかろうはずはありませんが、対米輸出金額と対米自動車輸出金額が減少したことが、すべてトランプ関税の影響とは言えないのではないかということです。
自動車輸出を調べるついでに、自働車部品と鉄鋼、非鉄金属の輸出を調べてみました。輸出数量と単価の推移を全体、対米、対EU、対アジアで比較してみました。自動車部品の輸出からご覧ください。
確かに対米輸出の5月は下降ですが、対EU,対アジアも下降しており、単価も大きくは変化していません。続いて鉄鋼です。
鉄鋼、非鉄金属の関税は3月から引き上げられましたが、対米輸出について大きな影響は認められません。また輸出全体に対する対米輸出の割合も2024年度で7%程度ですのでそう大きくはありません。数量的には対アジアが大部分になります。ただ、単価では、対米、対EUにくらべ対アジアは著しく低くなっており、輸出されている鉄鋼の種類が異なることが推測されます。最後に非鉄金属です。
非鉄金属の対米輸出数量は3月以降減少傾向にあり、単価も下降傾向です。ただ、ここでも輸出全体に対する対米の割合は、2024年度で約7%程度と高くなく、対アジアが大半を占めているのも、単価が対アジアが低いのも鉄鋼と同じです。
確かに自動車の5月の対米輸出は心配な状況ではありましたが、必ずしも関税だけの影響とも言えない可能性もありました。日本にとって輸出の旗頭である自動車に対して実際のところどれほど影響がでるのか、関税交渉の行方とともの多いに気になるところではあります。